TaKaKuAtの日記

インドネシア語の学習記録です。

日本語訳に見られがちな「逆茂木型の文章」をどう攻略すべきか

 

 こんにちは。

 

 いきなりですが、私は今読みたい本があります。

 木下是雄さんが著者の『理系の作文技術』という本です。漫画版も出るほどの人気らしいので、もう読んだことがある方も多いかもしれません。

 

 何故読みたいかというと、読み手にとって読みやすく理解しやすい文章の書き方・構成などを教えてくれる内容で、今後通訳や翻訳をする際にもきっと大きな助けになってくれるだろうと思ったからです。この本で推奨されている文章とは、論理的な流れに沿って、意見と事実が区別されており、不要な表現等によって意味が曖昧になっていない文章を指しています(ネットの解説で読んだ)。これは理系の方が論文を書く時だけではなく、分野を問わず文章を書くすべての人に考慮されるべき注意点だと感じました。

 

 また、この本では翻訳文などに散見されるという、「逆茂木型の文章」にも触れています。逆茂木型の文章は、中心のトピックとは関連の薄い事柄から核心に向けて徐々に説明を重ねていく文型で、文の終わりまで読まないと全体の意味がつかみにくいことから、避けるべきであると著者は主張しています。

※下に参考図があります。

 

 特に、逆茂木型の文章は外国語から日本語へ訳した際によくみられるそうです。理由は、英語には関係代名詞(名詞をより詳しく説明するために名詞の後に配置される代名詞)があるからです。

 

 インドネシア語にも「yang」や「tempat」などの尼語学習者を一度は躓かせる厄介な関係代名詞があります。そのため、逆茂木型文章について学ぶことは、今後私が読みやすく理解しやすい日本語訳を作るためのヒントになるはずです。

 

 

 具体的に例文を挙げて考えていこうと思います。例としていい感じの逆茂木型文章を見つけたのでこちらを使いますが、この記事が悪い文章だというわけではありません…。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220418/k10013588171000.html

 岡山県倉敷市で3日前から行方が分からなくなっていた体長およそ2メートルのペットのニシキヘビが、18日夕方、飼い主の男性の車の中で見つかりました。」

これは記事の一文目の文章です。

→この文章を分解すると、

  1. 18日、岡山県倉敷市である事件が起きた。
  2. (脱走していた)蛇が発見された。

上の2点だけがこの一文の重要な点で、残りはより多くの情報を一文に収めるための飾りだと感じます。この文章では、「いつ・どこで・何が起きたのか」を瞬時に取り込めないのではないでしょうか。

 

 もし、この文章を、

→「18日の夕方、岡山県倉敷市で脱走していた蛇が無事発見されました。この蛇は、ニシキヘビという種類で、体長はおよそ2メートルもありました。三日前から行方が分からなくなっていましたが、本日、蛇の飼い主である男性の車の中から発見されました。

という様に細かく区切れば、正しい情報がより素早く正確に入ってくるのではないかと思うのです。

 

 また、元の文章の訳出を容易にするために文節ごとに分けると、

岡山県倉敷市で // 3日前から行方が分からなくなっていた // 体長およそ2メートルの // ペットのニシキヘビが、//18日夕方、// 飼い主の男性の車の中で // 見つかりました。

こうなります。そして、これをセンテンスごとにインドネシア語に訳し、

→ Di Kota Kurashiki, Prefektur Okayama, // yang hilang sejak 3 hari lalu, // yang memiliki panjang sekitar 2 meter, // ular jenis Nishiki atau Sanca, // pada tanggal 18, petang, // di dalam mobil milik laki-laki pemilik ular tersebut, // berhasil/telah ditemukan. 

自然な文章になるように組立て直します。

→ Di kota Kurashiki, Prefektur Okayama, ular jenis Nishiki atau Sanca yang berukuran sekitar 2 meter yang sudah 3 hari hilang, berhasil ditemukan di dalam mobil laki-laki pemilik ular ini pada tanggal 18, sore. 

 最後に、このインドネシア語を日本語の一文になるように訳してみます。

岡山県倉敷市で、三日前からいなくなっていた、体長約2メートルほどのニシキヘビもしくは”サンチャ”と呼ばれる種類の蛇は、18日の夕方に、この蛇の持ち主の男性の車の中で発見されました。

 

 すると、逆茂木型の元の文章とほぼ同じになりました。上に挙げたの文章を見比べると、緑のほうが格段にわかりやすいのではないでしょうか。

 

 この逆茂木型の文章を図で表すと以下のようになります。

 
 

 

修飾語や説明が木の枝のように連なっているため、一文が長くなってしまいますし、最後まで読まないとそれぞれの要素の関連性が理解しにくいです。

 

 一方で、緑色の文章では、短い一直線の矢印が出来事の流れを順序立って説明しているイメージです。

 

 結論として何が言いたいかというと、文章は「文法・単語的に正確に訳す」よりも誰が聞き手・読み手なのかを理解し、「核となる意味をくみ取って相手が受け取りやすく理解しやすいように訳す」べきだと学ぶことができました。もちろん作品によっては、書き手の持ち味として活かすべき文章構成もあると思いますが、時には文をブツ切りにする勇気も必要だと感じました。また、わかりやすく、読みやすくなるように原文を加工して訳すことができるのは、機械翻訳に負けない人間の強みでもあるのではないかと思います。

機械翻訳って一文を一文でしか訳せないですよね?認識が間違っていたらすみません…)

 

 

 最後に、一回だけ日本語訳の練習をしてみます。文章はある作品の一部を引用したものです。

Lagi pula, dunia telah menjadi dingin, tanpa kehangatan interaksi antar-manusia 
seperti dulu, yang bagi saya merupakan elemen esensial dalam perjalanan jelajah. 
Jarak fisik yang tercipta oleh pandemi telah memperlebar pula jarak emosional, 
membuat orang semakin ekstra waspada dan mudah curiga terlebih pada yang tak 
dikenal. 

原文が二文からなっているので、まず、二文になるように訳します。

更に、私にとって各地を訪問するときの重要な要素であった、以前のような人間同士の交流の温もりがない冷たい世界になってしまった。パンデミックによって引き離された身体的距離は、心の距離をも希薄にし、人々は特に他人に対し過剰に警戒し疑うようになった。

 次に、好きなところで文を区切って訳してみます。

さらに、世界は冷たくなってしまった。もう以前のような人との交流の温もりはない。私にとっては各地を巡るときの大切な瞬間だったのに。パンデミックが作り出した身体的距離は、人々の心の距離をも引き離し、人は過剰に警戒したり疑ったりする。他人だと尚更だ。

 

短く区切った方が読みやすく感じますが、なぜかいまいちな出来なのは、やっぱり私の翻訳技術が足りないからですね ( ;∀;) レンシュウシマス

 

 上で使った文章は、実は国際交流基金のアジアセンターが行っているアジア文芸プロジェクト「YOMU」の作品の一つです。

asiawa.jpf.go.jp

 インドネシア人作家のアグスティヌス・ウィボウォさんが書いた『Dunia Baru, Diri yang Baru』という作品で、西野恵子さんが日本語に訳しています。インドネシア人有名作家たちの面白い作品も読めますし、素晴らしい日本語訳も読めます。ぜひ読んでみてください。

 

今回もブログを読んでいただきありがとうございました。

 

 

19 April 2022 Takakuat